みほうちゃんがうちのジムに来たのは、今から16年前、みほうちゃんが8歳の時。お父さんとお母さんが、初心者レッスンを受けに訪れた時に、一緒について来たのが、野中三姉妹でした。「三人のうちの一人でいいから、クライミングを続けて欲しいな」というお母さんの言葉通りに、末っ子のみほうちゃんが無我夢中で登り続けて、立派なクライミング選手へと成長しました。

今から5年程前、前オーナーからジムを引き継いだ子連れの私は、このオンボロのジムをいつまで続けて行くか悩んでいました。クライミングジムはめちゃくちゃ儲かる商売というわけではありません。手を引く経営者も増えている中、自分の子供の将来を考えれば、安定してお給料がもらえる会社勤めの方がいいのではないかといつもいつも考えていました。

そんな頃、クライミングが東京オリンピックの正式種目になったというニュースを耳にします。当時全く会う機会の無かったみほうちゃんがクライミング選手として世界で大活躍していたのは、同じ業界にいてよく知っていました。クライミングが正式種目になったら、みほうちゃんは出場するに違いない。もしメダルを取ったら、テレビや新聞がそのルーツを調べるために取材に来るはず。そのときにこの場所が無かったら??? いや、ダメだ。まだジムを閉めちゃダメだ。

そのとき私は、何があっても、東京オリンピックが開催されるまではこのジムを続けようと決めました。小さなみほうちゃんが初めてうちを訪れた時のこと、ここで一生懸命登っていた男の子みたいな少女のことを、みんなに伝えたい。

そして今、それが現実になったんです。様々な新聞社の取材を受け、私は記者さん達にチビみほうの話をしました。こんなスゴイことってある??? 私の想像を現実にしてくれたみほうちゃん、本当にスゴイよ! 銀メダルおめでとう!おめでとう!本当におめでとう!!

金メダルを目指すフランス大会まで、なっちゃん先生、頑張れるかなぁ・・・(笑)